人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
 ***

 夜の雨の道を、救急車がサイレンを鳴らして走る。
 私は泣きそうになるのをこらえ、必死に処置をされる勇朔さんの手を握っていた。

 彼は目をつむったままだ。だけど、私は先ほどの救助隊員に言われた言葉を胸に、必死に涙をこらえていた。

「気をしっかりもってください。大切な人を助けるのは、大切な人の想いなんです」

 勇朔さんが婚約者であることを告げると、彼はそう言って私を励ましてくれたのだ。

 私と話していてくれた彼は救急車のサイレンが聞こえてくると、すぐにてきぱきと勇朔さんの脚の付け根に包帯をきつく巻き、救急隊員へと引き渡しをしてくれた。
 クラッシュ症候群は、時間との戦いなのだそう。おかげで、勇朔さんはすぐに現場から運び出された。 
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