人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
「大丈夫です、彼はきっと助かります。でも、あなたが不安そうだと彼も不安になってしまいますよ」

 そんな励ましを最後にもらった私は、しっかりと気を持って勇朔さんの大きな手を握る。

 私にはまだ、伝えられていない事がある。だからお願い、どうか助かって。

 そんな想いを胸に、サイレンを鳴らして走る救急車の車内で、私はまだ目覚めぬ勇朔さんの顔をじっと見つめていた。

 やがて救急車は病院へと到着する。
 血液透析のできる大病院でないとクラッシュ症候群の患者は助からないらしいが、自衛官である勇朔さんは無事、大病院である自衛隊病院へと搬送された。
 彼が自衛官かと救助隊員に訊かれたのは、そういう理由があったらしい。

 ストレッチャーに乗せられた勇朔さんはすぐに処置室へ入る。
 私はずっと彼の手を握っていたが、そこでやっと離し、処置室に吸い込まれてゆく彼を見送った。
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