人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
 処置室の扉が閉まると、私はそのまま廊下にへなへなと座り込んでしまった。こらえていたはずの涙がぽろぽろあふれ出し、それだけ気を張っていたのだと気づいた。

 病院までついたのだから、きっと大丈夫。
 そう思うのに、不安で仕方がない。もしもを考えると、やるせない。

 勇朔さんが辛いのを、私は分かっていたはずなのに。私より先に彼が助け出されていたら、こんな事態にはなっていなかったかもしれないのに。

 不安と後悔が胸の中でぐるぐるとまざって、それが涙になってあふれ出してくる。

「勇朔さんに……私、まだなにも伝えられてないのに」

 こんなにも悲しくて、辛い。
 想いを伝えるために、勇朔さんは走って会いに来てくれたのに、私はなにも返せていない。それどころか、こんな事態に……。

 深夜の誰もいない病院の廊下で、私は声を押し殺してひたすらに泣いた。
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