人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
 どのくらい泣いていたのだろう。処置室の扉がぱっと開いて、私は慌てて立ち上がった。
 涙を拭い、医者のもとに駆け寄る。

「あの、勇朔さんは⁉」

 焦りすぎてうまく発音できないが、私は必死に答えを求める。医者はそんな私に目を瞬かせ、それから淡々と言った。

「処置は無事終わりましたが、予断を許さない状態です。まだ意識が混濁していますし、腎機能障害が残る可能性もあります」

「そんな……」

 つぶやいたはずの言葉は言葉にならない。喉がひゅっと締まり、呼吸が苦しくなってしまったのだ。

 医師はそんな私に一礼して、廊下の向こう側へ去ってゆく。
 すると処置室の大きな扉が開いて、ストレッチャーがそこから出てきた。私は慌てて涙を拭いて、ストレッチャーへ駆け寄る。
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