人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
「勇朔さん!」

 先ほどよりは声が出て、ほっと安堵した。

 たとえ目を覚ましていなくても、聞こえているかもしれない。だとしたら、私が弱気になってしまった姿なんて見せたくない。勇朔さんに、生きてほしいと伝えたい。

 看護師とともに病室に移動し、ベッドに移された勇朔さんの隣に寄り添った。
 救急車の中と同じように、彼の手を握りしめる。

「勇朔さん、戻ってきてください。私、まだ伝えてないことがたくさんあるんです」

 私は、あの場所に閉じ込められる前に勇朔さんが伝えてくれた言葉を、ひとつひとつ思い出す。
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