人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
「勇朔さん。私、私の存在があなたの出世の邪魔をしてるって思って離れました。でも私、本当は勇朔さんのこと、好きだったんですよ?」

 まだ目覚めない彼の顔をじっと見つめ、言葉を紡いだ。
 泣かないようにつとめて、この思いが全部、勇朔さんに届くように祈りながら。

「それに、私が千歳さんを探していたのは、うさまるを助けてくれたのが千歳さんだと思い込んでいたからなんです。私がずっと探していたのは、本当は勇朔さんだったんです」

 言いながら、やっぱり涙があふれてくる。必死に袖で拭いながら、彼への想いを紡ぐ。

「お礼を伝えたいから。気持ちを伝えたいから。目を開けてくださいよ……」

 勇朔さんの手を、ぎゅっと強く握った。
 大きくて温かい手だ。私を抱きしめたり、なでてくれたり、守ってくれたりもした、優しい大きな手。

「私をあの土砂災害から救ってくれたのは、勇朔さんだったんです。そして、今も救ってくれた。あなたは、私のヒーローなんです。ヒーローが、こんなところで死んだらダメなんですよ」
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