人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
「それは俺のセリフです。あなたが生きていてくれて、良かった」

 そんな勇朔さんの言葉に、彼が生きていた喜びに、胸がいっぱいになる。

「私、わた、し――」

 勇朔さんの目が覚めたら、伝えたいことがたくさんあったはずなのに、涙が邪魔をして全然うまく喋れない。
 そんな私の背を、勇朔さんは優しくなでてくれた。

「無理して喋らなくて大丈夫です。俺は、ちゃんとここにいますから」

 勇朔さんは、こんなときですら優しい。

 この優しさが好意ゆえなら、私もちゃんとお返ししたい。お返ししたいのに、言葉は涙になるばかりで全然紡げない。

「芽郁さん」

 彼の凜とした声が、私の名を呼んだ。

「はい」

 そう短く返事をすると、彼の大きな手が私の頬を包み、優しく涙を拭ってゆく。

「こうして抱きしめてもらえるのは大変嬉しいのですが、このままでは、俺、うぬぼれてしまいます」
< 168 / 178 >

この作品をシェア

pagetop