人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
 最初は〝第百二施設直接支援大隊〟のある神奈川県の駐屯地で彼を探していたのだけれど、全国を探すようになったのは、【自衛隊員は五年に一度くらい転勤がある】ということを聞いたからである。

「日本を守る使命感、そしてそのために鍛えられた屈強な体。筋肉質な腕でぎゅうって抱かれたらもう……」

 鈴華が両手で自分を抱きしめ、急にうっとりしだしたから、私は苦笑いを浮かべた。

 鈴華は〝恋多き乙女〟という感じの一つ下の後輩で、男性の前では常にぶりっ子。一部の女子社員からは疎まれているが、根は素直で良い子だし、仕事はできるので私は嫌いじゃない。

「別に私は、恋をしたいわけじゃないから」

 ため息交じりに告げると、鈴華は「またまた〜」と私の肩を小突いた。
< 18 / 85 >

この作品をシェア

pagetop