人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
 彼はハッとして、困り顔で後頭部に手を置く。

「すみません、驚かせるつもりはなかったのですが」

 彼は一歩下がると、背筋をしゃんとしてこちらに軽く会釈した。彼のグレーのチェスターコートが、風に揺れる。

「改めまして、羽田勇朔です。はじめまして」

「はじめまして、伊丹芽郁と申します」

 私も彼に倣って小さく頭を下げた。すると彼の頬が柔らかくほころぶ。

「思った通り、かわいらしい方だ」

 どきりと胸が跳ねる。頬が熱くなったのを感じたけれど、どうしてよいか分からずに固まってしまった。

「すみません。俺の職場は仕事柄、あなたみたいな小柄な方は少ないので、つい」

 そう言って笑う羽田さんは、なんとなく温かくてなじみやすい。
 私は思わず笑顔を浮かべ、「行きましょうか」と歩き出した羽田さんに続いた。
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