人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
「別にすごくなんてないです。私、小学生の頃に両親が亡くなって。祖母に引き取られたんですけど、その家も土砂崩れで無くなってしまって」

 そこまで言ったとき、羽田さんがはっと息をのんだのが分かった。だから私は暗くならないよう、努めて明るい声色になるように笑顔を浮かべた。

「その後は伯父の家にお世話になったんですけど、伯父にも私と同年代の子どもがいたので、大学まで通わせてもらうのは申し訳なくて」

 そこまで言って彼を見上げた。羽田さんは思ったよりもずっと優しい顔をしていた。

「大変でしたね。あなたは、強くて優しい人だ」

 そんなことを言われたのは初めてだ。どぎまぎして、思わず立ち止まってしまう。目線を前に向けると、目の前に動物園の入口が見えていた。

「着きましたね。行きましょうか」

 私を振り返り、羽田さんが言う。優しい笑みで手を差し出され、私は思わず「はい」と、その手をとってしまった。
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