人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
「どうぞ」

 勇朔さんはベンチの前に着くと、そう言って私に座るよう促した。

「ありがとう、ございます……」

 腰掛けながら小さな声でつぶやくと、隣に座った羽田さんのほっとしたような吐息が白く濁って消えた。

「祖母の家が土砂崩れに遭ったって、言ったじゃないですか。そのときに、飼っていたペットのうさぎが巻き込まれてしまったんです。そのとき、すでに両親は亡くなっていたんですけど、その家族との思い出も、全部土砂に埋まってしまった気がして……そのことを、思い出してしまって」

 言いながら、止めようと思っていた涙は逆にどんどんとあふれてくる。

「そうだったんですね」

 羽田さんはそう言うと、ためらいがちに私の頭へ手を伸ばす。
 髪をそっと優しくひとなですると、やがてその手はとまどいながらも私の背に伸ばされた。

 優しく抱き寄せられ、私は彼の胸に頭を預けた。
 逃げようと思えば逃げられる強さ。だけど、私は彼の温かさにどこか懐かしさを感じ、安心感を得ていた。
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