人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
 フラミンゴ舎から、賑やかな鳴き声が聞こえる。爽やかで冷たい冬の空気が、しばらくして私の涙を止めてくれた。

「すみません、本当に」

 ひとしきり泣き、落ち着いて体を上げると、羽田さんの優しい抱擁も解かれた。
 彼のハンカチを借りて目元を拭い顔を上げると、微笑む羽田さんと目が合う。彼は静かに首を横に振り、「大丈夫ですよ」と伝えてくれた。

「そろそろ行きましょうか。まだ見ていないのは、キリン、カバ、シマウマ、それに……向こうにはオカピもいるそうです」

 気を使ってくれているのか、羽田さんは大型動物ばかりを言ってくれる。私もしゃんとしようと、笑顔で「はい」と頷いた。

 それから大きな動物たちを見て回っていると、夕暮れが近づいてくる。動物園の閉園時間も迫り、私たちは出口に向かって歩いていた。

「あ……」

 私はつい、出口付近のお土産屋の前で足を止めた。たくさんの動物のぬいぐるみに混じって、白いうさぎのぬいぐるみがあったのだ。垂れ耳のその姿は、まるでうさまるそっくりだ。

「なにか気になるもの、ありましたか?」

「いえ、すみません」

 そう言って再び歩き出したのだけれど、羽田さんは出口直前で突然思い出したように「お手洗いに行ってきてもいいですか」と動物園内へ戻っていく。しばらく待って彼が戻ってきてから、私たちは動物園を後にした。
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