人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
 しかし、羽田さんは申し訳なさそうに眉をひそめた。

「いや、どこかで聞いたことがあるような気がするのですが、顔が思い出せないんです。ということは、きっと名簿かなにかで名前を見たのだと思うのですが――」

「そう、ですか」

 思わずうつむいてしまった。そんなに都合よく、簡単に見つかるわけがない。分かっていたのに、やっぱり肩を落としてしまう。

「力になれなくて、申し訳ないです」

 彼の声が低く、悲しく聞こえて、私ははっと顔を上げた。申し訳ないことをしているのは、私の方だ。

「いえ、とんでもないです。あの、ありがとうございました」

 深々と頭を下げる。
 少しでも協力してくれた羽田さんは、やっぱり優しい人だ。

 彼に素敵な恋人ができますように。そう願いを込めて、頭を下げた。
 しかし。
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