人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
「で、何があったんですかー?」

 まだ会社を出て三歩しか歩いていないのに、終業後の鈴華はぐいぐいくる。
 私は仕方なく、動物園やディナーに行ったこと、改めて交際を申し込まれたことなどを告げた。すると鈴華は「先輩、愛されてる〜」と冷やかしてきた。

「連絡も取り合ってるんですよね? あー、もう素敵な彼氏さんじゃないですか」

「まだ付き合ってないから」

 そんな話をしながら駅前の居酒屋へ向かっていると、不意に「芽郁さん?」と声を掛けられた。振り向くと、ジャージ姿の羽田さんがいた。

 鈴華は彼の大きさに「わーお」と分かりやすく目を丸くしながら、羽田さんを見上げている。

「どうも」

 私が軽く頭を下げると、鈴華が隣で「昨日の人ですか?」と聞いてくる。こくりと頷くと、羽田さんが申し訳無さそうに眉を八の字に曲げた。

「すみません、お邪魔しました」

 羽田さんがそう言って踵を返そうとしたけれど、鈴華は胸の前で小さく手を振ってそれを止めた。

「いえいえ、私のことはお気になさらず。せーんぱい、また明日!」

 鈴華は気を利かせたつもりなのか、そのまま駅の方へひとりで去っていった。
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