人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
 駅で電車を降り、家までの道を歩く。ゆっくりとした歩調は、きっと私に合わせてくれているのだろう。
 冷たい空気の中、色々な話をしながら歩き、家までもう少しというところで、羽田さんは私に訊いてきた。

「今週末は、何か予定がありますか?」

「え?」

「あ、いや。クリスマスなので、もしかしたら先約があるかもしれないと思いまして。なければ、一緒に過ごしたいと思ったのですが、ご迷惑でしょうか……?」

 見上げた羽田さんは、街の灯りに照らされて、ほんのり頬を染めているのが分かる。

「すみません、その日は予定がありまして」

 申し訳ないなと思いながら口を開くと、「そうですよね、クリスマスですもんね」と羽田さんは肩を落とす。

「ご友人と、ですか?」

「あー、いえ。ひとりで熊本に行くんです。自衛隊のクリスマス祭りに。各地のそういう駐屯地のお祭りを巡って、千歳さんを探していて」

 私がそこまで言ったとき、羽田さんは「なるほど」と頷いた。
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