人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
「わあ、大賑わいですね」

「ええ。俺がいたときも、毎年こんな感じでした」

 見上げた羽田さんはなんとなく懐かしそうに目を細め、「行きましょうか」と私に手を差し出す。素直にその手を取ると、羽田さんはしっかりと握ってくれた。

 さっそく受付へ向かい、入場手続きをする。すると、「あれ」と一人の自衛官がじっと羽田さんの顔を見た。

「羽田二尉……ですよね?」

「ああ。今はもう一尉だが」

 羽田さんがそう言うと、途端に男性は姿勢を正し、羽田さんに敬礼を向けた。

「ご無沙汰しております」

 羽田さんは表情を変えずに「やめてくれ、今日は俺は休みなんだから」と彼を制する。すると彼は、今度は羽田さんと私の繋がれていた〝手〟に注目した。

「もしかして、デートですか?」

「まあ、そんなところだ」

 羽田さんはやっぱり表情を変えず、『デート』という部分も否定せずにそう言う。すると、彼はまじまじと羽田さんの顔を見た。

「あの羽田二尉が、女性とデート……」

「一尉だ。それから」

 ぼそっとこぼされた一言にそう反応し、羽田さんは一度私に優しく微笑む。しかしすぐに笑みを消し、彼に向き直り口を開いた。

「彼女がとある自衛官を探しているんだが、所属が分からなくて困っている。千歳仁斗という名の自衛官を、聞いたことはないだろうか?」
< 56 / 85 >

この作品をシェア

pagetop