人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
 それから、戦車や装備品の見学をしたり、食堂での食事を楽しんだ。
 行く先々で、羽田さんは私に代わり〝千歳さん〟の聞き込みをしてくれる。この師団で顔の利く彼がいてくれるのはとても心強かったが、これといって〝千歳さん〟に繋がる情報は得られず、夕方になった。

「申し訳ないですが、きっと〝千歳〟はこの師団にはいないのでしょうね。知り合いの方もいないようですし」

「そう、ですよね」

 思わずため息をこぼすと、「力になれず申し訳ないです」と羽田さんに頭を下げられた。

「いえ、とんでもないです。今まで、各地の駐屯地祭りを訪れましたが、人探しに必死でこんなふうに色々見たのって初めてだったので、楽しかったです」

 事実だ。羽田さんがいてくれなかったら、私はきっと戦車や装備品に目もくれず、ひたすらに〝千歳さん〟を探し回っていた。

 彼の解説を交えながら、国防のために配備されたたくさんの軍事物を見ていると、いかに平和が尊いものなのかと考えさせられる。きっと本来、駐屯地祭りはそういうことのためにある。
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