人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
 しかし、辺りは一面土砂と倒木だらけ。小石が入り混じるそこはドロドロとした何かに包まれ、濁った水が流れ出している。どこにどの家があったのか、知っている人じゃないとわからないだろう。
 かろうじて残っている家々の屋根と周りの景色を頼りに、私は自宅があった場所へ向かった。

 うさまる、うさまるはどこ……?

 ひどくぬかるむ土砂の上を駆け、靴下も制服のスカートも泥だらけにしながら、必死に探した。
 我が家の屋根らしきものが見えて、慌ててそこに手を入れる。泥がすごくくさい。だけど、そんなことはいとわなかった。ただ、うさまるを助けたかった。

「うさまる、うさまる!」

 しかし、私はすぐに駆けつけた救助隊員によって取り押さえられてしまう。

「こちらの民家に人は残っていないと情報があります。なので――」

「うさまるがいるんです! うさまるは家族なんです!」

 泣き、わめき、叫ぶ。止められても、止まらなかった。父と母を失っても私を支え続けてくれた、大切な存在。うさまるまで、失いたくなかった。

「離してください!」

 そのときだった。

「おい、いい加減にしろ」
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