人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
 しばらくして片付けを適当なところで終わらせ、リビングへ向かった。

 この部屋は2LDK。私の部屋と羽田さんの部屋を除いたら、あとは共用部分になる。

「羽田さん」

 彼は夕日の差し込む部屋の中、元々置いてあったソファに腰掛け、何かの雑誌を読んでいた。

「終わりましたか?」

「一応、大きなところは終わらせました。そろそろ夕飯の支度とかもしなきゃな、と思って」

 そう言うと、羽田さんは「そうですね」と立ち上がる。

「その前に、少しお時間いいですか? 官舎の住民に、挨拶をして回りたくて」

 なるほど、住んでいるのは自衛官ばかりである。きっとこういうところの規律も、しっかりしているのだろう。

 羽田さんは用意していた粗品を手に、一階から順番に一緒に部屋を回った。

 ここの官舎は全部で十五世帯が入居している。基本的には若い家族が多く、夫婦だったり小さなお子さんがいる家庭が主だ。穏やかな方が多く、仲良くやれそうな気がする。

 やがて、最後の一部屋、我が家の隣の部屋の前へ来た。インターフォンを押すと、「はーい」と元気な子どもの声が聞こえた。
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