人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
 低く、お腹に響くような大きな声。迷彩服の〝彼〟が、そこにいた。

「あなたが泣いて叫んで、手で土を掘り返したところで、何も変わらないだろう」

 顔はヘルメットで隠れて良く見えない。だけど、〝彼〟は静かに、私に向かって言う。

「何を探しているか、きちんと伝えて欲しい。闇雲に言われても、こちらには伝わらない」

 突き放すような言葉、だけど優しい声色。私は暴れるのを止め、その場にへたり込んだ。背の高い〝彼〟が、私の前にしゃがみ込む。

「大丈夫だ。俺に、話してほしい」

「うさまるを……ペットのうさぎを、探しているんです。真っ白で、耳が垂れてるこのくらいの大きさの……大事な家族を」

 手で大きさを表しながら、脳裏にうさまるの姿が浮かんだ。この土砂の中から見つけ出して、今すぐ抱きしめたい。ぼろぼろと、涙がこぼれた。

「分かった、ありがとう」

 そう言うと、〝彼〟は立ち上がる。すると着ていた迷彩柄の上着を脱ぎ、私の肩に掛けてくれた。

「うさまるは、俺が必ず見つける。だから、あなたは戻りなさい。このままでは、体が冷えてしまう」

 大きな手が、私の頭に乗る。一人で無謀なことをしていたことに気づき、私は素直に首を縦に振った。
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