人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
「羽田さん……」

 彼の微笑みはあまりにも優しい。思わず彼の名を呟くと、羽田さんはちょっとだけ申し訳無さそうな顔をした。

「その、呼び方なのですが」

 首をかしげると、羽田さんは言いにくそうに、人差し指で頬をかく。それから、そっと口を開いた。

「建前上は婚約者なので、その、名前で呼んでいただいたほうが良いかな、と思いまして。もちろん、無理強いはしませんが」

 確かに、婚約者なのに他人行儀なのはおかしい。この官舎にいさせてもらう間、私は彼の〝婚約者〟なのだ。

「勇朔、さん」

 口の中でつぶやくつもりで声に出すと、彼ははっと目を瞬かせる。

「嬉しいです」

 勇朔さんは満足そうに目を細め、それからなぜかポケットに手を入れた。

「あなたに、これを」
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