人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
 ***

「勇朔さん、にんじん切り終わりました」

「では、じゃがいもをお願いします」

 私たちは今、並んでキッチンに立っている。というのも。

 夕飯の食材を買いに出かけ、帰宅すると勇朔さんはさっそくキッチンに立った。
 料理は得意だと言われ押し切られそうになったが、それは申し訳ないからと私も料理を名乗りでた。祖母と暮らしていたときから、料理はよく手伝っていたから得意な方だと思う。

 すると、「じゃあ、ふたりでやりましょうか」と提案され、一緒に料理を開始したのだ。

 勇朔さんはその大きな体からは想像もできないくらい手際が良い。料理が得意だというのも納得で、私も負けじと包丁を握った。

 ふたりで食卓を囲みながら、これからのことについて話し合った。
 料理や掃除は手の空いている方がすること、洗濯は各々でやること、無断で互いの部屋には入らないことなど、とりあえず必要なことを決める。

「それから、〝千歳〟の手がかりになりそうなことがあったら、つど共有しますね」

 そう言う勇朔さんに、「お願いします」と頭を下げる。勇朔さんも、「今後ともよろしくお願いします」と私に頭を下げてきた。

 心配もあったけれど、この同棲生活は穏やかに過ごせそうだ。きっと、勇朔さんが優しいからだと思う。
< 73 / 85 >

この作品をシェア

pagetop