人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
 成田さんはそう言うと、「愛されてますね」と優しく笑った。

「いや、そんなこと……」

 言いながら照れてしまう。だけど、嬉しくて頬がにまにまと垂れてしまう。
 勇朔さんは、周りに厳しい人らしい。だけど、以前熊本の駐屯地を訪れたとき、彼は誰からも慕われていた。
 きっと、厳しさの根っこの部分に優しさがあるからなのだと思う。

「いいですね、相思相愛」

 成田さんのその声にはっとして、慌てて頬に力を入れる。すると、「パパー」と廊下の向こうから元気な声がした。琉人くんだ。ランドセルを背負っている。

「パパ、先に出たのにまだここにいるー。お仕事、遅刻しちゃうよ!」

「ごめんごめん」

 愛入ちゃんの言葉に、成田さんはおどけるように自身の頭に手を当てた。

「長々とすみません。では、行ってきます」

 成田さんはそう言うと私に軽く頭を下げ、「行くぞー」と子どもたちを引き連れてゆく。
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