人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
 思わず声を大にしてしまった。勇朔さんの皿洗いの手が止まってしまう。
 しばらく水道の水の音だけがしていたが、勇朔さんは「ええ」と短くつぶやき、再び皿洗いを始めた。

 だけど、私は手にしていた布巾を動かすことはできなかった。

「そう、ですか……」

 今までずっと、〝第百二施設直接支援大隊〟にいたはずの〝千歳さん〟を探してきた。別人だとしたら、今まで私のしてきたことは意味がなかったことになる。
 だけど〝千歳仁斗〟という名前は、あの日私を救ってくれた彼に直接聞いたわけじゃない。私は、彼が肩に掛けてくれた上着に縫い込まれた、あの文字を見ただけなのだ。

 ため息がこぼれた。この二年間、私のしてきたことは無駄だったのかもしれない。

 すると勇朔さんは、慌てたように口を開いた。

「名前が少し違うとか、部隊が間違っているとか、そういう可能性がないわけじゃないですから。俺の方で、近い名前の自衛官も近日中にピックアップしておきます」
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