人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
「土は固いし、なかなか思った形にならなくて大変でした。チンアナゴたちはするするっと土の中に潜っていけるのが、羨ましいです」

 思わず笑ってしまった。チンアナゴが、羨ましいだなんて。 

「すみません、チンアナゴを見てそういうふうに思う人がいるんだって、おかしくて」

「いえ、いいんですよ」

 勇朔さんはそう言って微笑む。先程までの恥ずかしさは、どこかへいってしまった。

「そろそろ行きましょうか」

 そう言って、チンアナゴの水槽の前から大きな通路へ出ようとした。そのとき、繋いでいた勇朔さんの手が私をぐっと引っ張る。

「わあ!」

 バランスを失った私の腰を、勇朔さんはうしろから抱えてくれた。おなかの前に勇朔さんの逞しい右腕が回る。
 すると、目の前を幼稚園児くらいの子どもが走っていった。
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