人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
「すみません、つい、とっさに」

「いえ、あの子にぶつかっているところでした。ありがとうございます」

 平静を装ってそう答えたけれど、背中に感じるのは、がっちりとした彼の胸板。
 どくどくと鼓動が早まって、勇朔さんに伝わってしまうのではないかと不安になる。

 動けずにいると、ぱっと勇朔さんの手が離れる。それで私もはっとして、慌てて体勢を整えた。

「怪我はないですか?」

「大丈夫です。勇朔さんが、すぐに受け止めてくれましたから」

 ほっと安堵の息をつき、笑顔で振り返る。見上げた勇朔さんの優しい表情に、収まりかけていた鼓動がまた急速に速くなった。

「あなたを守れて、良かったです」

 ぽっと頬がほてり、勇朔さんを見ていられなくなる。私は急いで彼の手を取ると、「次、行きましょう」と奥へ進んだ。
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