人探しをしていたはずなのに、優しすぎるエリート自衛官に溺愛されています
 昼食をとった後も、水族館を満喫した。
 魚だけでなく、ペンギンやアシカ、カワウソなんかもいて、その度に癒されてゆく。

 水族館を出る頃には日が西に傾いていた。
 春に向かいはじめる季節だが、この時間になるとすっかり寒い。吹いてきた冷たい風に思わず身を縮こませていると、勇朔さんが口を開いた。

「遅くなると、その分冷えますからね。今日はこのまま帰って、夕飯は家で食べましょうか」

「いいですね。体があったかくなるもの、作ります」

 私がそう言うと、勇朔さんは優しく微笑んだ。

「じゃあ、久しぶりに一緒に作りましょうか」

 私はその言葉に「はい」と頷き、勇朔さんの手に自分の手を乗せた。勇朔さんは少し驚いた顔をして、それからきゅっと私の手を握ってくれた。

 夜に向かう、二月の空。澄んだ空気に一番星が輝いている。
 優しい彼の体温は、どきどきするけれども安心もする。私はくすぐったい気持ちになりながら、勇朔さんと家路を歩いた。
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