魔法石の密造人/黒曜石と水晶とどっちが良い?
6
 そのとき、彼が横合いから再び攻撃する。
 二度目だから、もう彼の手持ちは一つ。
 そして、また私が作った魔法石ブルーサファイアが青白い光を放って、防いでしまう。直撃の爆発でも火傷を負ったたけで死に至らず、それすらみるみるうちに回復してしまう。

(あり得なくない? そんなに何度も!)

 よほど大きなパワーが溜まっていたのか? 無意識のうちに、それだけの守る意思を込めてしまうほどに、私はあの子が好きだったのか?
 それともこの魔族の男は、自分でパワーを補充できるとでもいうのだろうか? 見たところ、明らかに今の防御はブルーサファイアの効果だが、一度魔法石にしてしまえば、素材によっては自動でパワーが再充填されたり、その特定の魔法が使えない他の人が補充もできる場合があるとは知っている。だがこんなときに最悪形で実例を目の当たりにすることになるとは、痛恨の極みだった。
 そして、魔族の男はこんなふうに言った。

「この魔法石は素晴らしい。何度も殺して、新鮮な血肉を味わえたし、何度もなぶり殺しにして楽しめたのだから。作者にはお礼を言いたいなあ」

 どうやら魔法石のブルーサファイアの加護があったせいで、あの可愛い赤ちゃんと新妻さんは、何度も傷つけられたり殺されて生き返ったらしい。そのせいで余計に苦しめられて、心ゆくまで虐待され、最後には魔法石を取り上げて殺されてしまったのだろう。
 私は吐き気がして眩暈まで覚えた。足がすくんで膝が震えだしてしまう。自分が危ないことももちろんだけれど、あの哀れな犠牲者たちの運命を思うと心まで萎えるようだった。

「私が作った。降参するから、もう一人の彼は見逃してあげてください。奴隷にするにも食べるにも、私の方がいいでしょ?」

「そう言いながら、不意打ちを狙ってるだろ? まだ魔法石を隠し持っているんじゃないのか?」

 用心深い奴だ。意地も悪いようだし。
 私は、ポケットの黒曜石と予備の水晶を取り出して、草の生えた地面に投げる。だけど魔族の男はまだ信用していないようで、警戒を解かない。
 だから、黙ってスカートを落として、上着もシャツも脱いだ。とうとう靴どころかパンツまで脱いで、暗がりの中で手前に放り投げる。武装解除のついでに羞恥心も尊厳も解除、辺りに人気もなく夜だったことだけが僅かな慰めだろうか?
 どうせ魔族は夜目が利くから丸見えだろうが、少なくとも人間の男性ではないし、この暗がりなら人間の彼にもよくは見えないはず。

「おい」

 いつのまにか目の前に魔族男が立っていて、次の拍子に横っ面を殴り飛ばされた。様子からすると裏拳で殴られたらしかった。

「ぶっ!」

 引っくり返って転がりながら、口の中が切れて血の味を感じたし、頭がジンとした。どうにか起き上がろうとしたところに、みぞおちにつま先で蹴り込まれてショックで脱糞してしまい、空気に異臭が広がる。次の瞬間には苦痛と恐怖で嘔吐していた。
 まだえづいているところを、髪をつかんでグイッと上を向かせられる。
 顔を合わせれば、まだ青年のような容貌だったが、魔族は寿命が長いそうだから人間の尺度では年齢を測れない。もちろんメンタリティも人間とは異なっているようで、凶悪犯やサイコパスみたいな性格が多いらしかった。

「わりいなぁ、口の中や胃袋に武器隠してないかってな! てっきり尻の穴にナイフでも隠して入れてるのかってさあ!」

「ひっ!」

 恐怖が背筋を突き抜けて、私の目から涙があふれ出す。泣き出したのを見て満足そう。
 彼が背後から忍び寄り、黒曜石を至近距離で叩きつけたが無駄だったようで(自爆も同然で逆に彼の方が火傷を負っていた)、後ろ蹴りにされてぶっ飛ぶ。最後のチャンスを使い果たして。
 さっき小水で濡らした私の股間を無作法な手指が這い回って、ズンッと入り込んでくる。生まれて初めて知る破瓜の激痛だった。「痛い」と呟き訴えるのを無視して容赦なくかき回され、抜いた指の血を魔族男が舐めて味見している。

「ほほう、処女だったのか? どおりで臭いわけだ、ちゃんと洗ってないんだろ? てっきり穴に隠し武器でも持てるかって心配しちゃったぜ。まさか、おっぱいに細工して何か隠し持ってないよな? ああ、それは無理か! そんなに大きくないもんなあ、あっはっは!」
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