OverDose
メサペイン
「刃佳、今日も残業なの?」
私は昨年同棲を始めた恋人に尋ねる。
返事は、いつもと全く変わらなかった。
「美和…あー、うん、ごめん…」
「ううん、大丈夫」
「ありがとう、美和、愛してる」
そう残し、外に出ていった刃佳に、行ってらっしゃいと溢した。
いつからだろうか、私も愛してると、返せなくなったのは。
刃佳は息を吐くように嘘をつく。
愛してるなんて、どうせ思ってもないくせに。
刃佳はきっと、私が気付いてないと思ってる。
でも、ホントは気付いてるよ?
刃佳の上着に女物の香水の香りが残ってることも。
シャツに口紅がついていることも。
「バカだなぁ」
私は胸の痛みを隠すようにメサペインを口に運ぶ。
薬なしでは生きられないようになってしまった私の身体。
「もう今日は寝よう」
私はすぐに眠りについた。