へなちょこリリーの惚れ薬

「……やればできるじゃない」

右手を刺し貫いた短剣から、血が吹き出る。
彼女の血が、腕にかかる。
服が真っ赤に染まっていく。

ぐらり、と倒れて、彼女の姿が消えた。

「ゲホゲホっ……!」
「トレニア、大丈夫?」
「ええ……。リリー、大丈夫?」
「……」

人を刺しちゃった……。

いや、人じゃないけど……。

「わ、わたし……」
「リリー、後ろ!」

気付くと、後ろには彼女が立っていた。
相変わらず、下半身は石のまま。
血は流れていなかった。

「馬鹿ねえ。私は精霊なんだから、血が出るわけないじゃない。自分の服を見てごらんなさい」

真っ赤に染まったと思った服は、一滴の血もついていなかった。
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