へなちょこリリーの惚れ薬

フリルを縫い付けている間、黒百合は寝てしまっていた。
ヒマだから寝るしかないんだろうけど。

……ノア様はひとりでなにしてるのかな。いつも。
バラを眺めてたり? 森を眺めてたり?

あれ。
バラ園、誰も世話してないだろうに、枯れてなかった。
なんとなく、バラ園に佇むノア様の様子が見える気がした。

ノア様は、最初に、あの石をバラの形にして見せてくれた。
あんなアクセサリーが似合ったら素敵なのに。

私には……。
どうせ似合わない。

「……」

針を指に刺してしまって、また血が出た。
きっと泣くよりはマシなんだ。
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