へなちょこリリーの惚れ薬
「丸一日、地下から水が出続けたら、どうなると思う?」
「お城はだいたい、ちょっと高いところにあるわよね」
「そう。被害を被るのは、城下に住んでる民よね」

敵の兵士たちは、降伏した。
町には家族が住んでいるからだ。

水くらいで、と思うかもしれない。最初は、どこもそんな反応だった。

「でもねえ、井戸を塞ごうがなにしようが、ジワジワ足元から水が上がってくるのよ。何時間か経つうちに、人の胸元まで浸水してたわ」
「……それで……?」
「想像してみてごらん。城の中にいるのに、水に閉じ込められるのよ」
「逃げられなかったの?」

「城から逃げ出せば、ノアの軍が待ってる。ノアの残酷さはたいしたものね。……で、それをみた領主も仕方なく降伏したわ。兵士がみーんないなくなっちゃうんだから」

敵兵が逃げ出したら、もう一度説得。

殺す必要は無かった為、敵兵力を取り込んで、ノア軍はすぐに膨れ上がった。
領主が降伏した町を、それ以上攻めることはなかった。


「ま、膨れ上がったのは、ノアに対する恐怖もだろうけどね」
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