へなちょこリリーの惚れ薬
「それで、続きは?」
「ああ。…二人で古文書に残る遺跡をめぐって、ある日、湖のそばの村にたどり着いた」
神殿を探していることを村人に話すと、意外な答えが返ってきた。
「大昔の神殿なら確かにあるが、神が宿る石を神官が持ち去った」
崖の上に上ってみると、ぼろぼろの神殿が残っていた。
湖を見下ろすその神殿は、石柱が残るばかりで、壁も祭壇も、ほとんど崩れて形をとどめていなかった。
神がいなくなった神殿は、巨大な生き物の骨に見えた。
湖を渡る風が吹き抜けていくだけで、物音ひとつしない。
「ローズ。ここにはもう神様はいないんじゃないかな」
「私もそう思う」
「神殿自体がもう壊れているし、中のものも何も残っていない。残っていたとしても、盗賊が持ち去っただろうけどね」
物足りない顔をして、ローズは湖面を見つめていた。
「こんなに綺麗な場所なんだもの。確かに、神様はいたんだわ」
「そうかもしれない。でも持ち去られてしまったんだろ?」
「そうね。どうやって探したらいいのかしら。私、会いたい」
「……そうだね。でも、今日のところは帰らない?」