へなちょこリリーの惚れ薬
うん、とうなづいたその時、ふらりと彼女の体が風に煽られた。
「あっ……」
「ローズ!!」

足を滑らせて、彼女の体はまっすぐ湖へ落ちて行った。掴みそこねた、と気づいた時には、体が水面に叩きつけられた。

「ローズッ!」

彼女はどこかに体を打ったらしく、血が出ていた。
水が赤く染まって、まずい、と手を伸ばす。


「しっかりしろ!」
「……うっ……」

生きてる。






誰か……!



「誰か助けてくれ!」


叫んだ瞬間、頭の中に声が響いた。



『私を呼んだのは誰?』



とてもはっきりした声。
気のせいなんかじゃなかった。

「ローズを助けてくれ!」

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