へなちょこリリーの惚れ薬
翌日、私たちは葡萄酒を持って崖の上の神殿を訪れた。

湖面をローズが飛び回り、崖を下ったところに洞窟を見つけた。

「行きましょう」

洞窟の入り口は広く、ほうきに乗ったまま降っていく。


たいまつの明かりが、前方に金属の光を反射させた。
人工的な扉が行く手を阻んだ。


「誰が一体……」
「こんな湿気の多いところで、どうして錆びないのかしら」


湖に隠された洞窟の奥に扉があるなんて、いかにも意味ありげじゃない。

「楽しそうだねローズ」
「ドキドキするじゃない」

ローズは真剣な目で扉を見上げた。
自分の身長の倍はあるだろう。

「お礼を言いに来たんです。もし聞こえているなら、姿を見せてください」
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