へなちょこリリーの惚れ薬
彼女の声に反応して、扉が静かに開きはじめた。
ローズの顔が緊張でこわばった。

手をつなぐと、少し握り返してくる。


「……行こう」


奥に進むと、闇の中にぼう……と浮かび上がるものがあった。
中にあったものをみて凍りつく。

人の身長ほどはある巨大なアメジストの結晶。

それに、人の骨が、後ろから抱き着くように覆いかぶさっている。
その遺体がまとっていたと思われる服は朽ち果てて糸くずになってしまっている。

かろうじて残った頭がい骨が、アメジストの上に載っている。

『神が宿る石を神官が持ち去った』


おそらくは、彼が持ち去ったのだろう。


こんな巨大な石をどうやって。



「すごい綺麗……」
「ローズ、触っちゃだめだ」
「えっ」
「えっ」

ペタ、とローズが石に触れると、それは強烈な光を放った。
とても目を開けていられない。


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