へなちょこリリーの惚れ薬
闇の中に浮かび上がる姿は見た目は人間と変わらない。

黒い髪に黒いドレス。
人に近い姿をしているが、違う。

私たちは、神域に入り込み過ぎてしまった。


「……どうして、助けてくれたんですか?」
「あなたが求めたからよ。銀髪のあなた」
「ありがとうございました。ローズを失ったら一生後悔するところでした」

ローズがお礼です、と葡萄酒を手渡した。

「昨日のお礼に来たんです。助けていただいて本当にありがとうございました。まさか神様と話せるなんて」


それ以上近づいては駄目だ。

相手は人ならざる者、軽々しく近づいていいわけがない。


「……神殿から持ち去られたと聞きました。あの骸骨は……」

私はアメジストの上の頭がい骨を指さした。


「私を連れ去った人間よ。一緒にいたけど、向こうは人間だからね」
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