へなちょこリリーの惚れ薬
久しぶり、会いたかったよ。
そんな普通の挨拶もできないほど、彼女は悲しい目をして沈んでいた。
「ここ最近、戦が絶えないのは、あなたのせいだって聞いたわ。ノア」
「……」
「怪我をしてるのね」
「かすり傷だよ」
「治してあげる」
彼女の手が頬に触れると、傷はたちまち消えた。
長い間会っていなかったローズは、髪が伸びて、大人びて見えた。
伏せたまつ毛が震えていた。
会いたかった。
本当は。
気持ちが溢れて、私は彼女を抱きしめていた。
「……ローズ、会いにきてくれて嬉しい。会いたかった」
「……私も」
「戦に巻き込みたくなかった」
「その気持ちだけで嬉しいわ。でも、もう、私の村も兵士たちの略奪にあったり、被害が出ているの」
ローズの笑顔は固かった。
私は、とっくに彼女を戦に巻き込んでしまっていたんだ。
「……初めて会ったの、2年前だったね」
「……そんなに経ったのか」
「あの時は、おっとりしたお坊ちゃんだったのに。今じゃ、軍を率いる立場ってわけね」
無理して笑顔を作らなくていいのに。
そんな君を見たくなかった。
私のせいだ。