へなちょこリリーの惚れ薬
私たちは夜が来るのを待って、城を抜け出した。
女神が暮らす湖の城へ向かい、飛んだ。

ほうきで二人乗りをして。
出会ったあのころのように。


月も星も。
手を伸ばしても届かない。

大人になんてなりたくなかった。


君とずっと夜空を飛んでいられたらどんなに良かったか。



すべてを捨てて、逃げ出して。
ずっと遠くへ。



「……何を考えてるの?」
「……なんでもないよ」

君に嫌われるようなことは言わないよ。
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