へなちょこリリーの惚れ薬
「いいでしょう」

そういうと、黒百合の女神は手のひらを広げ、その上にアメジストの原石が現れた。

「どっちにする?」
「どういうことですか」とローズ。
「私の力を遣えるようにしてあげる。ただし一人だけよ」
「二人はダメ?」
「図々しいわね」

それなら私が、とローズが進み出た。

「ローズ、僕が」
「いいえ。私はもともと魔法が使えるもの。私があなたの力になる」

さっさとして、と黒百合の女神がせかした。

「私が契約します」

女神の手のひらの上のアメジストが強烈な光を放ち、闇を照らした。
気づくと、石は形を変えて、ペンダントになっていた。

ローズの胸元に、光が吸い込まれていった。


「いつでも呼びなさい。その石は私のかけら」
「契約ってこんなものなの?」
「私とつながっているから、持っているだけでいいわ」
「……つながってる……?」

黒百合は壁に手をつくと、そこから突然、植物のツルが壁一面に走った。

「ローズ、やってごらんなさい」
「……わかったわ」

迷いなく壁を叩くと、ローズはその伸びた植物のツルを急激に成長させてみせた。

「こんなこともできるわ」

黒百合の女神が、タンっ、と足を鳴らすと、途端に床が揺れ始めた。

「……!」
「あなたは大地の力を使えるようになったのよ。使い方を間違えないようにね」
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