へなちょこリリーの惚れ薬

私は、家を出ると、トレニアの家へ向かった。
いちいち他人の家族に、断りを入れるような性格ではない。
直接、二階の窓にコツンと、小石を当てた。

窓から、トレニアがひょこっと顔を出した。

「いちゃいちゃしてるところ悪いわね」
「……何の用?」
「リリーがノアに会いに行ったわよ。アンタたちには教えておいてあげようとおもって」
「……こんな時間にか?」
とシャーロット。

「あら、だってノアは死んでるのよ?」

上がったら? とトレニアは言い、玄関まで降りて来た。
表情に戸惑いとも不安とも、つかない色がうかんでいる。
< 231 / 275 >

この作品をシェア

pagetop