へなちょこリリーの惚れ薬
私は、家を出ると、トレニアの家へ向かった。
いちいち他人の家族に、断りを入れるような性格ではない。
直接、二階の窓にコツンと、小石を当てた。
窓から、トレニアがひょこっと顔を出した。
「いちゃいちゃしてるところ悪いわね」
「……何の用?」
「リリーがノアに会いに行ったわよ。アンタたちには教えておいてあげようとおもって」
「……こんな時間にか?」
とシャーロット。
「あら、だってノアは死んでるのよ?」
上がったら? とトレニアは言い、玄関まで降りて来た。
表情に戸惑いとも不安とも、つかない色がうかんでいる。