へなちょこリリーの惚れ薬
城を出ると、トレニアが待っていてくれた。
黒百合の女神と、シャーロットも一緒だ。

「良かった! 帰ってきたんだねリリー」
「トレニア……」

黒百合が連れてきてくれたのよ、とトレニアは言った。

「もう、会えないんじゃないかって、ちょっと思ってた」
「……私も、ちょっと迷ってた」
「ノア様のとこに、行こうとしてた?」
「……うん。ほんの少しね」

もう会わない。
二度と会わない。
たぶん、私とノア様の約束。言葉にはしていないけど。

「トレニア、私、ちゃんと言えたんだ。好きですって」
「……そっか! 良かったじゃん」
「トレニアのおかげだよ。私がくじけそうになると、いつも助けてくれるから」

リリーが頑張ったんだよ、とポンポンと、髪を撫でてくれた。
これは、シャーロットの癖なのね、きっと。移ったんだ。

もう、友達の彼氏を羨んだりしない。
……ノア様のそばにいたかった。
いたかったよ……。 
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