へなちょこリリーの惚れ薬
「リリー?」
「……ノア様?」
「どうしたのこんなところで」

鬱蒼と茂った森の間から、突然、姿を現したのはノア様。


信じられない!
ウソみたい!

また会えるなんて……。


彼は籠を指さして「百合を摘むためにこんな遠くまで?」と微笑んだ。
「はい。本当はもう少し遠くまで行くつもりだったんですけど」
「遠くって」
「この先の湖まで」
「何しに?」

予定なんてない。

あなたに会えればと、ぼんやり思っていただけ。


「また逢えたらって思ってた」
「……私に? 嬉しいよ」




この人の微笑みはまるで魔法だ。

あたしは、何も言えなくなる。
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