へなちょこリリーの惚れ薬
サァ……と雨が、風に乗って降り始めた。

「大変だ、リリー、こっちへ」
「えっ、あっ、はい!」


ぎゅっと手を握られ走り出す。


あたし、今、手をつないでもらってる……。


たどり着いた先は、彼の城だった。
だいぶ古い城らしく、壁はところどころ崩れていた。


ギィィーと、鉄の扉を開けて駆け込む。
大広間の先の階段が左右に二つ。


二人とも髪も服もびしょびしょ。

「ごめんね」
「えっ」

白い肌に、アメジストのイヤリング。
同じ色の両目がすぐそばにある。



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