へなちょこリリーの惚れ薬
過去
……ふわふわする。

ほうきに乗って飛んでる。




あたしは……空を飛んでいた。

いつから魔法が使えるようになったんだろう。


使えるようになった覚えはない。

「そっか、コレ夢か……」

そうでもなきゃ、あたしが飛べるはずないもの。



夢だと思うと気が楽になって、しっかりとほうきを握りしめた。
好きなように、自由に飛べる。
風が気持ちいい。

眼下に、城が見えてきた。

あたしによく似た子が泣いている。
長い赤毛。黒いワンピース。



『ノア様……どうして』



あのバラ園だ。
真ん中に深い穴が掘られている。

その中に眠っているのは……。







ノア様。






< 66 / 275 >

この作品をシェア

pagetop