へなちょこリリーの惚れ薬
「リリー! 家に帰ってこないと思ったら、今度は何、を……」
「おばあちゃん。起こしてごめんね」
「リリー……。お前、その手、それに顔……」

おばあちゃんは、ガラスの破片が散らばっているにも係わらず駆け寄ってきた。

「お前、魔法を練習してるんだね。手を見せてごらん」
「……たいしたことないの。ちょっと切れてるだけだから」
「それでも、ほら、包帯巻くよ」

おばあちゃんは、何もないところから、ポンと、包帯を出した。
くるくると、手のひらを覆ってくれる。

「女の子の顔だからね」

しわくちゃの手。
その手が頬に触れると、傷は薄くなった。

いいわね。
魔法が使えて。

「どこで覚えたんだい。最近、森に行ってるようじゃないか」



今は言えない。



「……おばあちゃん」
「なんだい」
「何も聞かずに、今だけ練習させて。ちゃんとできるまで」
「……」
「私、魔法を使えるようになりたいの。今やらなきゃ、ずっと出来ない気がする」
「いつか、使えるようになる」
「今やるの。私がやるべきことなの」

おばあちゃんの手が止まった。

「会いたい人がいるの」

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