へなちょこリリーの惚れ薬
練習に疲れて、そのまま眠って、また起きて。

おばあちゃんが用意してくれた、ハチミツを塗って、りんごの薄切りを挟んだパンをつまむ。

その繰り返しで、3日が過ぎた。たぶん。



「あー……。痛い……」

血が乾いて、なんかカサカサカピカピするし。
さすがにちょっと疲れてきた。

相変わらず、アメジストの原石は、ハートの形にならなかった。
よく考えたら、ノア様に会ってもどうしようもならない。
トレニアとはケンカ別れしている。

『なにもかもうまくいかない』ってこういうことを言うのだろう。

「……」

ひとりきりの部屋。
さみしい、なんて言ってる時間無い。




「リリー!」

割れたガラスの向こうから、呼ぶ声がした。
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