へなちょこリリーの惚れ薬
「部屋汚なっ!!」
「うん、ガラスとか割れちゃってさ」
「こんな部屋じゃ、彼氏できないよリリー!!」
「……うん。まったくその通りだね……」

ごもっともです。

「あのね、トレニア」
「なに?」
「……ごめんね」
「気にしないでよ。仲直りしよう」

ね?
差し出したトレニアの手を取って握手した。

トレニアはいつだって正しい。

「リリー、一回、顔洗ってきなよ。包帯も替えてさ」
「……うん。ありがとう」
「その間にガラス片付けておいてあげるから」

リリーを部屋から出して、割れたガラスを元に戻す。
ベッドに寄りかかって、うとうとしてたんだろう。
床に、血がこぼれて黒く乾いていた。

「……苦しんだんだねリリー」





顔を洗って、髪を洗って。
包帯を巻きなおしてもらう。
おばあちゃんが淹れてくれた紅茶と持って部屋に行くと、すっかり片付いていた。

「魔法が使えるっていいね」
「リリーも使えるようになるよ」

そう言って、トレニアは一冊の本を取り出した。

歴史の教科書だ。

「ここ読んで」

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