へなちょこリリーの惚れ薬
『ラウネル統一戦争』
『周辺諸国の侵攻に幾度もさらされていたラウネルを、独立国家として完全に統一するため、ラウネルの一地方・トルニー城のカイン王子が始めた戦争。軍師・ノアの力により、対立する豪族をまとめ、ラウネルの独立を成し遂げた。』
「ノア様っていうのは、カイン王子のお兄さんなの」
「お兄さん?」
「そう。ただ、本人に王様になる気はなくて、カイン王子に王位を譲ったんだって」
「教科書には載ってないんだけど」
トレニアは別に、分厚い『ラウネル国史』という本を取り出した。
「学校の図書館って、こういうのはたくさん置いてるのね」
「……学校に、行ってきてくれたの?」
学校に行きたくなかったのは、トレニアも一緒なのに。
「先生、リリーのことを心配していたよ」
「そう」
「『他人の悲しみを気軽に否定するな』。今日先生は珍しくいいことを言った」
「……」
「あとねー……。リリーのおばあちゃんに言われたの。私のやるべきことはなにかって」
「おばあちゃんがそんなことを?」
「リリーが出会ったノア様は……。隣国からの侵攻を防ぐため、人柱になって、結界を張った
の。この国全体に」
「……」
知ってる。
「幽霊だったのよ」
誰もいない古城に暮らす、ノア様。
「違う」
「リリー?」
「確かに死んでる。でも幽霊じゃないの。彼の魂は森を……ラウネルを守っているの」
バラの下で眠っているわけじゃない。
「……でも、この世の人ではないわ」
「……」
夢の中で、埋められたのも、確かに見た。
そして泣いてたあの子。
あたしは知ってる。
「おばあちゃん……」