へなちょこリリーの惚れ薬
ノア様は、バラ園に埋められていた。
泣いていた、若い『ローズ』。
彼女は……おばあちゃんだわ。
もう100歳をとっくに過ぎている、村一番の魔女。
今の私と同い年くらいだった。
しかし、その話をしても、トレニアも困るだろう。
……初恋の人が、おばあちゃんの元カレだなんて、あんまりだわ。
そう思うと、涙出そう。
私は、分厚い本のパラパラとページをめくって、彼が統一を成し遂げたかを読んだ。
軍を指揮して、諸侯をまとめたこと、結界を張ったこと。
……今の、城の王子様は、このカインって王子の家系なのね。
夢の中には出てこなかったけれど。
「あ」
「あ?」
黒百合の女神。
彼女のことは、教科書には載ってなかった。
私は本を奪い取るように、彼女の名前を調べ始めた。
……どこにも載っていない。
おばあちゃんなら、知ってるんだろうか。
「黒百合の女神って、知ってる?」
「なにそれ。っていうか誰?」
「ノア様を結界にした張本人なんだけど……」